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硝子の少年は40になっても「硝子の少年」を歌い続ける

 KinKi Kidsのデビュー曲はミリオンをとるように、とジャニーさんの悲願を受けてキスミス、ジェットコースターロマンスを経て硝子の少年が出来たという。

 ジェットコースターロマンスを作った達郎さん自身がこれではミリオンを取れないだろうと1週間待って作ったのが硝子の少年。当初は関係者から「暗い」「踊れない」という声があがり、KinKiの2人も不安にしていたそう。

 

「『絶対ミリオン超えの曲を』という難題を課せられて作ったんだけど、関係者の間では『暗い』『踊れない』って大ブーイングだった。そうすると、KinKiの2人も不安になるわけですよ。でもその時、僕が彼らに言った言葉は、『大丈夫。これは君たちが40になっても歌える曲だから』と。確信犯だった」

 

 40になっても歌える曲というのはどういうことなのだろう。それだけ深みのある曲ということなのかもしれないし、歌い手が40にまで重ねた人生のおもさに耐えられる曲ということかもしない。40になっても歌っていて恥ずかしくない曲、そして22年(KinKiは18歳デビューなので)経っても色褪せずに生き続ける曲、というのが「40になっても歌える曲」の必要十分条件なのだろう。

 

硝子の少年は点のような曲

 90年代はユーロビートが主流のなか、昭和歌謡漂う硝子の少年はそれはそれは流行りの曲ではなかったと思う。流行りの曲、そしてこれから流行る曲というのはリスナーも幅広くなるし単純接触効果も増大するので、流行りに合致するというのは売れる要素の一つになる。

 しかし流行りのものというのはいつか廃れ別のものに取って代わられる。その際に流行りの曲調で作られた曲はその時代に取り残される。いわば数十年後に「あ〜あの時代の曲調だよね〜」と懐メロに、時代を象徴する曲になる。

 その点、硝子の少年は発売当初の時点から「昔っぽさ」もとい、馴染みのよさがあった。良い意味で時代の一要素にならずに埋もれず、時代という軸の上になく時の流れとともに風化せずに曲が「点」として生き続けていること。これが硝子の少年が「40にもなって歌える曲」の理由の一つだと思う。

 

ジャニーズのアーティストにとってデビュー曲というのは自分達の象徴になる曲である。

 ジャニーズの曲は基本なんかしらのタイアップをつけて売り出されることが多いが、デビュー曲というのはどのグループでもタイアップがつかず(多分…)そのグループのためだけにある曲と言える。

あのグループといえばこの曲、あの曲のイメージ。というように、ジャニーズ事務所に数あるグループの中でデビュー曲というのは1番の差別化・キャラ付けを担う要素がある。

その中でも時代の象徴ではなくKinKi Kidsのデビュー曲という要素だけで輝き続けている硝子の少年は、名実ともにKinKi Kidsの名刺となり得ていると思う。

 

硝子の少年を書かせたのは君たちなんだよ

 デビュー曲といえば明るさやフレッシュさなど10代後半や20代前半の年齢の煌びやかな輝きを前面に押し出したものが多い。が、硝子の少年は歌詞だけ見てもそしてMVを見るとより明らかだが、「別れ」「哀愁さ」そして「危うさ」が一つのテーマとなっている。

 援助交際が横行する時代に向けての憂う気持ち、少年・少女期の壊れやすさ・傷つきやすさへのメッセージが題材になっている。こんないかにも若い頃にしか歌えないような歌詞、大人になると失ってしまう無垢さ、純粋さがこの曲の土台にある。

 硝子の少年の歌詞は当時、歌詞作りに難航していた松本隆さんがブラウン管の中で歌うKinKi Kidsをみて「壊れやすいけれど、したたかそうな感じ」「硝子だ」と思ってそこから一気に書き上げたという。この「壊れやすいけれど、したたかそうな感じ」にKinKi Kidsの、少年性を謳いつつも人に聞き手に伝え聞かせ訴えかける力があるという本質・根源を見出したのだと思う。

 

 いわば硝子の少年はデビュー曲であり、KinKi Kidsの根幹をも担っている曲だと思う。硝子の少年のインパクトが強過ぎてその後の路線に迷うこともあったと2人が言っていたこともあるけれど、デビュー曲かつKinKi Kidsの本質を突いている曲なので仕方がないというか。

 証拠に硝子というワードは君たちから拾ったという松本隆さんに対して「ぶっ壊れそうな感じがあったんですかね笑」という光一さんは一見防弾ガラスのような強さを兼ね備えているけれど、硝子の少年を歌うときは昔からの壊れそうな表情だし、剛くんはもう一度ここに立ち止まって見てそこから今を見てみようと思わせられると評している。ターニングポイントになった曲の中にデビュー曲にもかかわらず硝子の少年が入っていた理由はここにあると思う。

 

 25年前に生まれた「壊れやすさ」がいまだに目の前で歌われ、それを聞くことができるというのは奇跡に等しいものだと思っている。単純に25年続くというだけではなくて、本質がずっと変わっていない。40を超えても歌うに必要な純粋な少年性、それを失わずに未だに表現できること。それこそがKinKi Kidsの強みであり、らしさであり、コアであると思っている。

 

 

 

これでやっとDialogue Book読める……、そしたらまた色々と書き足したい