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雨の打つ音が好き

キメラ怪文書になったムーラン・ルージュの感想

MRの感想のはずがなんか行列のせいでキメラ怪文書になった。

 

 

いつも感想書く時ってやっぱり心に刺さった作品が感想を書かせようとするわけで。それは基本演出について、心に留めたくなるような演出、その演出からなされる演出者が表現したい心情とかその手法に惹かれて感想を書きたくなるんだけど、ムーラン・ルージュはそうではない。

 

MRの演出ってなんかここがすごい!みたいなのってなくて。まあパッケージ作品だからだろうと思うけど。盆もセリもないし、正面という客席に向けて演技をするだけで別に立体的でもなんでもない。観ててここの演出が特別いいなと思うことってどんな作品にも大抵一回はあるんだけれど、MRは驚くことに一回もなかった。

 

じゃあなんでそんな作品を計4回観に行ったのかというと、

1回目:音響が最高だった

2回目:演技がとてもわかりやすく感受性偏差値3の私でも感動した

3回目:井上芳雄がやばすぎた

4回目:井上芳雄がやばすぎたしあーやもやばすぎた

(2〜4回目は全部平原/井上回)

 

と、大体が演技、特にサティーン役のあーやと相手のクリスチャン芳雄それぞれの演技がとてもすごかったということ

あと、観ていて絶対にストレスにならない、ストレスフリーで見ることができるからだと思う。

 

なんでこんなにストレスフリーなのか。それは音楽がマッシュアップだからであり、あとショー部分が長いので実質的に芝居をしている部分は他のミュージカルの2/3くらいになってるからなんではないかな、と思う。時間測ったことはないんだけど。

 

マッシュアップなの。聞き覚えがある、知ってる曲だから。ってこと以上に、実質全編サビだからっていうのも大きいのかもしれない。

エレファントメドレーとか多分そうじゃん。基本曲ってイントロ〜サビじゃないメロ〜サビ〜アウトロって構成だけど、一つ一つを丁寧に何曲も歌われると、観客のボルテージも曲のテンション(構造)に合わせて行って変わる。数回ならいいんだけど、何回も何回も、ミュージカル楽曲あるあるのアウトロのウッベのラストノートを聞く、みたいなのを繰り返すと、やっぱり疲れるというか、体感時間をというものを認識するようになるんじゃないか。ウッベの音が鳴るたびに「終わり」を意識するんだから。

 

だからMRは音楽のつながりとシーンのつながり、どちらもがいい感じに隙間なく、紙と紙が糊代で貼られていくように流れていく作品だったなあと思います。

特にそれが意識されてるかなあと思ったのが、

2幕トゥールーズの「いのちがーはてるひーまーで」とシーンとシーンの繋ぎ目に歌い直すところか。

あそこはセリフ終わりだったけど、次の曲とイントロ部分と繋げるためにわざわざ歌い直している。

あと話はちょっとズレるかもしれないけれど、多分全人類好きそうなアブサンロクサーヌの繋ぎ

そしてそこから芳雄の絶叫からの音楽が途切れず(拍手間がなく)そのままアンダースコアでロクサーヌを弄りながら対話のシーンになっていくところとか。

 

なのでムーランはMVでいうワンカメショーを観ているような気分に近い。

私こういう(意味合い的な)暗転がない舞台が好きで。だからナイツテイルも好きなんだけど、ナイツテイルはどちらかと言うと暗転はないけどモチーフのものを持ち込んで一つの素舞台にシーン一つ一つで違う情景を観客の頭の中に生み出しているような演出(さあ描いて)

 

それに対してMRは、手前にバーっと幕が降りてその後ろでセットを転換して、幕が上がった時にはシーンがまた変わっている。視覚的には毎回カットを切り替えているような映像的な演出なんだけど、音楽が地続きなので結果としてワンカメショーを見ているような気分に近いなあと思う。

 

てなわけで、あと出演者みんな上手い。そんな理由で本当にストレスフリーで見れた舞台だし、終演後に15分後からもう一回1幕だよ!と言われてもガンガン観れると思う。そのくらいホイホイおかわりできる観やすいミュージカルだった。(値段を除いてね!)

 

 

以下それぞれについて。

 

1回目:音響が最高だった

ありえんところから聞こえる音

股の間のスカートが震える音響

芳雄初登場

ソファのアレ

上川トゥールーズとのハモ

24歳芳雄の立ち姿

 

1回目にして1階の前列で観劇という。ありがたやありがたや……。初日のど頭は色々覚えている。空間系bgmがふわ〜んと流れ開演10分前からプレショーとしてアンサンブルさんが壇上に出てきて(めちゃくちゃ目が合う)、それにも慣れてきたら剣を飲み込むパフォーマンスがあり、そんな赤い空間に気を緩ませていたら、上手から出てくるなんか背丈が高めの黒。

あ、芳雄じゃん……

とか思っていたらピタッと目の前でターンをしながらコートを翻し(コートを翻す動作がとても上手い)手を掲げ(手のポージングがとても上手い)ワァ全ての動作がきれドゥゥゥゥゥン!!!!!!

1階前列は音圧がマジでやばかったのです。

どれだけヤバいかというと膝の間でスカートの布が震えるくらい

日常生活では決して浴びない、それどこか観劇では決して、ライブでも中々浴びない音の密と圧を受けてめちゃくちゃそれだけに鳥肌が立ちっぱなしで心がワアワア言ってしまって何も覚えてない。

次に記憶があるのはデュークのSo Fresh, So Cleanの部分。

この曲

あのね

 

絶対にこの席だと聞こえてくるはずのない方向からダイレクトにバリサクの音が聞こえてくる

 

犯人幕間に探しました

これです

増設スピーカー



象とか内装とか風車とかあるけどこれだ。これが17000円だ。17000円の音がする。

 

芳雄初登場の流れからお察しの通り、この日座ってたのは下手でした。そう!下手の芳雄といえば!!!

 

ソファ!!!!!

 

はぁ〜〜〜〜井上芳雄ってあんなに無邪気に笑えるんだ………(脳裏にチラつくトート芳雄)(脳裏にチラつくロチェスター芳雄)

一気に話がカッ飛びましたけれども、この日の芳雄さんはビビるほど若々しくてですね。まず最初にびっくりしたのがBurning Down the Houseの右脚あげつつクラップしながら前進するところの振りで、あそこは「芳雄さんってあんなにハキハキ踊れるの?!」となり「俺たちは…ボヘミアーン!!」の前後の唇の角度30°ですみたいなニコニコ超笑顔。こんなに純度100%の若々しい笑顔を浮かべることができたんか………。井上24歳アメリカン芳雄、重心が両足共に均等で踵にかかってる感じで、表情もクルクルと入れ替わり喜ぶ時は目を細めて口が弧を描くように笑い、とてもかわいい。普通にとてもかわいい。

 

 

 

2回目:演技がとてもわかりやすく感受性偏差値3の私でも感動した

声色がコロコロ変わるあーやサティー

これは愛の物語

劇中劇笑うか笑わないか

 

2回目は7月中旬のあーやサティーン。この回はサティーンの「賢さ」にフューチャーされた回だった思う。クリスチャン侯爵と喋るサティーン、クリスチャンと喋るサティーン。その後デュークを呼ぶサティーン。どれもこれも声色を8種類くらい使い分けていたのが、「ああ、サティーンならそう使い分けるな。なぜならばサティーンは賢い女の子だから」と納得させられた。とりわけSympathy for the Devilの「手に入らないものもあるさあ」の部分、手に入れるか入れないかで猫撫で声→サティーンさん(戦闘態勢)の声にスパッと2回目で変わるの好き

 

ティーンの人生はサティーンのものなんだけれどそれはそれとしてあなたの歌を世界に広げて物語の中で私とあなたは生き続ける……。ムーランルージュという物語の主役が、いちばんカメラが当たっているのが1幕であろうと2幕であろうとサティーンだったなと1番感じたのがこの回。

 

平原サティーンはド頭の「ダイヤは永遠〜」がバックの夜と同じくらいの深みと広さをした歌声で、これが空間掌握力かー!となったし、その後もグラマラスな歌い方でそりゃバッキングもスイングするよなと納得がいったし、かと思えば「ティファニー❤︎」なのでThe Sparkling Diamondに花形スターであるサティーンの色気と魅力と実力が詰まりすぎてた

 

 

3回目:井上芳雄がやばすぎた

デュークの家で負けたクリスチャンの足音

ガチギレクレイジーローリング

 

終演後「いのうえよしおこわい」

この回はなんと言っても2幕のロクサーヌからのクレイジーローリング。

 

chandelier→ロクサーヌで純真だったクリスチャンが一気に染まっていくのにゾクッとするのはいつものことなんだけれども、なんかロクサーヌが凄すぎて気迫で泣けてきてしまった。その後のデュークの家でのサティーンとクリスチャンのお互いに痛めつけてしまっているやりとり、そして去り際のクリスチャンの足音で泣いた後にcrazy rollingがぶっ壊れすぎて逆に笑った後、最後大きく顔を歪ませて泣くクリスチャンで泣いた

1ヶ月見ないうちにcrazy rollingのクリスチャンが手をクニっとさせて口元に持ってく激ヤバエロちょっとキモ仕草身につけてて怖かった。君いつの間にそんなに大人の階段登ったんだい。ちょっとトートだったよ。キモかったです(褒めてます)

 

ロクサーヌがもう全部すごかったけど、前向いたところからグッと1番奥まであるいてくあそこの一連が特にすごかったしあそこからギア一段階上がってた気がするくらいにはすごかった。迷い、悲しみ、絶望、それらを全部怒りで燃え上がらせたようなロクサーヌで見ててめちゃくちゃ怖かった。クリスチャン、怒らせてはいけない男。

一幕クリスチャンは背筋を伸ばしてピシーン!と伸びたところから上の倍音多めのピンとはった声で歌うんだけど、そのウブちゃん芳雄クリスチャンがロクサーヌ周辺になると「見たくないんだぁぁぁぁ⤵︎ああ⤴︎ああああ」とめちゃくちゃピッチ揺らしてベントかけたりしてて、うわ〜!!クリスチャンの情緒は!!心が!!と焦ってしまう。

 

 

4回目:井上芳雄がやばすぎたしあーやもやばすぎた

あのね、chandelier

デュークの家のやり取り特にサティー

「ぼくをみて」

 

chandelierでハシゴを潜って上着来て戻ってくるのが、クリスチャンとサティーンが出会った時のあの1番苦味も知らない甘さ100%の時期を振り返ってるみたいで本当に好き

ジドラーに手を取られて振り回されるクリスチャンは飛び回るサティーンの幻影に対してふわっと甘く微笑んで手を伸ばしたり、それなのに次の瞬間現実を思い出してすごくやるせない顔や寂しさに満ち溢れた顔をしていたり、現実とのギャップにもがき苦しんでいて本当に可哀想で正直かわいかった。出会いの頃の姿に(クリスチャンが)夢の中で戻って、サティーンのことを忘れたいけど忘れられない、から決して忘れない忘れるものか、に変わるのがロクサーヌのイントロのバスドラのキックでガツーン!とくるので、あの切り替わりを見た時にあまりの熱量に体が沸騰しちゃう。あのイントロのデデデデデデデデデンデンズッズッデン!!

ロクサーヌは怒るかと思ったらずっと自分の無力さを歌っていたというか、とっても悲しんで耐えていた。ロクサーヌ後のシーンでクリスチャンが「サティーン、俺はサティーンに会いにきた」を100%デュークに向かって言ってたのが印象的。その後の「彼女の意志を確認してみれば」もデュークの方を向いていたし、ここのクリスチャンは連れ出すことこそがサティーンの為になると疑って、肝心のサティーンを見ないのがなんとも。前はここ、サティーンしか見えてない!って感じだったけど、いつからかデュークに対するライバル意識がバチバチに来るようになってサティーンを見なくなってしまった。crazyしてるわね。

ティーンに向けた「僕と一緒に飛び立とう!」が前はついてくるよね!絶対!みたいん感じだったのだ、恐る恐るという感じでタメを含んでいうようになって、クリスチャン〜!若い男!人生の経験値!!となってた。 青年は自分を探しにパリにきた。

your song返歌のテンポも良かったな。ちょっと詰まる感じの焦りが滲み出てる感じ。歌歌ってる人が返歌もらえないって本当にショックだと思うそれこそ裏切りなのだと思う。言葉で伝えられるよりも強烈な裏切り。

この日のcrazy rollingは「裏切るなら裏切ればいい」で濁音になるかと思ったら、ふんわりと微笑んで歌うからびっくりしちゃった。その後の「どうやって君を連れ去ろうか」で急に濁音になるの怖すぎる。ヤンデレ。これ聞いたときにどうやって君を連れ去ろうかの歌詞が

「どうやって君を連れ去って独り占めにして閉じ込めようか」くらいに聞こえて執着心しか見えずにゾッとした。重すぎるよ芳雄クリスチャン。

 

デュークの家で指ぱっちんするサティーンが毅然と前を向いていたのが心にきたなあ。クリスチャンの前では強くあろうとするサティーンだけれど、クリスチャンが消えたあとは心の傷と体の傷でどんどんボロボロになっていく。crazy rolling中も最後のyour song中もあーやが死にそうで死にそうで…。今までは体調が悪いが歌えてます、という感じだったのがここにきて頑張って歌ってるけどもう死にそうです(でも舞台として聞かせる歌声)という声で説得力が段違いだった。

「今まで傷つけてきたから」と遠ざけることでクリスチャンを大切にするサティーンに迫るクリスチャン、そこに「ぼくをみて」と声をかけるクリスチャン、このクリスチャンがこの日だけは、この日だけはサティーンを見ていなかった。見なかった!!

というか、このシーンのいわゆる劇中劇のセリフが、今まではしっかりと「劇中劇」だったのに対し、この日はサティーンのセリフに全部被せるかのようにクリスチャンがセリフを羅列しそしてその声はゾッとするほど感情が削ぎ落とされていた。それはまるで「出会わなければよかったのにな」の様でもあったけれど、この日は逆に目の前にクリスチャンを認めたサティーンが救われたかのように微笑んでいるような泣いているような、そして今まで自分にとっての救世主であったクリスチャンを今度はサティーンが迎えに行っていた。

 

 

 

 

おまけ

デデデデデデデデデンデンズッズッデン

シャンデリア→ロクサーヌのみんな大好きなつなぎの部分

デデデデデデデデ デンデンズッズッ デンッE♭E♭〜D〜D〜⤴︎D〜〜(Vn)

ここ!!!!!ずっと初日から芳雄千秋楽まで本当にここが好きだった。ここのためだけにまたMRに行きたい。そのくらいここが好き。サントラにもこの繋ぎを入れて欲しかった。

ここ、最初の8回のデデデデはバスドラ+タム+タムで叩いているのにズッズッだけバスドラになって潜まった後にデン!!!でクリスチャンの顔あげと同時にグッとクレシェンドがかかるの本当に好き。シャンデリアの夢うつつで虚ろな緑に包まれたクリスチャンが、このアウトロからイントロにかけての9拍の間に凄みを効かせた顔で真っ赤なロクサーヌになる。大好き。この瞬間で4回中4回鳥肌を立てていた。

ところで「よく聞け愛しのクリスチャン」って言われてるけどクリスチャンは聞いているのかな。ジドラーごめん、私は視界に神経を注ぎすぎて聞けてなかったと思う。

 

もっとおまけ

MRで一番好きなセリフ「ぼくはその日パリについたばかりだった。アメリカでの息詰まる生活から逃げ出したかった。自分の居場所を見つけたかった。心が解き放たれる場所、僕は革命家になる!芸術家になる!恋をする。船を降りたぼくは…エッフェル塔ルーブルにはいかないで…モンマルトルに行った!!!」

 

尻切れトンボ感想だけれど、楽しかったなムーラン・ルージュ!!!見てないのに友達の感想を聞いただけでチケットを買い足したやべえミュージカルでした。毎公演ごとにベテランのよしよしの民の感想の海に漂わせていただけたおかげで数ヶ月後に見直したら私の感想も芳雄100%になってたんですけど、芳雄さんのことだけ話しててもこの字数行くし、でももっと他のキャストのことも語り足りないし、2023年の夏を捧げて後悔のないミュージカルでした!ありがとう!