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「観客の想像力に委ねる」- 3/3 千と千尋の神隠し

千と千尋の神隠し。3月3日ひな祭りの日に行ってきましたーー!!

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2/28に萌音ちゃん回のプレビューがあり、3/1,2は環奈ちゃん回で今日が初日ラストという日でした。ナイツ初演の時もプレビュー二日後の初日にジョン来てて、今回もいらっしゃるかな〜と思ったら普通にロビーで行ったり来たりしていた!笑

(左端にかろうじて映るワインレッドのニットがジョン)

心の中で両手を合わせて拝み倒しました(会釈くらいしかできなかった)

 

千と千尋の神隠しって舞台にできるんだな……と驚いたのが正直な感想。

 映画の方を最後に見たのが何年前?という感じだったからうろ覚えだけれど、流れとかはまんま映画通りだったと思う。あと映画通りだなあと思ったのはキャストの皆さんの声でした。

 千尋千尋の声だったしハクは完全にcvが入野自由だった。リンと千尋ママもそうで舞台を見ているはずなのにキャラの声が耳に入ってくるから頭が混乱しちゃう。再現度がすごい。そういう意味では本家の夏木マリさんとWキャストになってる朴璐美さん(湯婆婆)なんてプレッシャーとか半端ないだろうにもう本当すごかった!悪意に満ちて豪快な湯婆と包容力があって器の大きい銭婆の演じ分けが光輝いていた。

 

「観客の想像力に委ねる」

 多分見た人の100人中100人がセットがすごいというだろうなあ、と思うくらいセットが豪華でお金のかけ具合が半端なかった。帝劇の上に迷路が出来てた。パンフレットにセットの写真があるんだけれど載せていいのかな…?5月くらいになったらそっと追加してるかもしれない。

 美術担当はナイツテイルと同じくジョン・ボウサーさんで、ジョン・ケアードと共有している信念「観客の想像力に委ねる」を思う存分味わえました。最高。ナイツとの大きな違いは観客を板の上に巻き込むか巻き込まないかでナイツは巻き込む型、千と千尋は観せる型かな。

 メインセットは盆の上に油屋の建物があり、そこから一本廊下が伸びているのだけれど、これだけで油屋の場所全てを表現してしまえるのだから面白い。盆が回転するのに合わせて千尋が動いて部屋の中に入ったんだな、とか。あと序盤の千尋が湯婆婆を訪ねるところでコミカルにエレベーターがどんどんと昇っていくシーンでは、動いているのが照明だけというシンプルさ。油屋の出口にある梯子は油屋の上層階の外につながる梯子になるし、こういうみたてというか、余白を観客自らの想像力で描け!というのは楽しくて興奮する。

じゃあ舞台は映画の内容をコンパクトに板の上に収めたものなのか、と思いきやそうでもない。

 

 個人的に素敵だったのが二幕で6番目の駅に赴くため電車に乗るシーン。うるさく騒がしい油屋の場面とは一転して舞台の上で誰も何も喋らない。人外たちに囲まれてただただ電車に揺られていくシーン。スクリーンには夕日に照らされる海が映り、影になった人型が次々と電車から降りて、千尋はハクを助けるために銭婆のところに向かう。この物語の一番谷でもあるシーンはこの時の千尋の孤独や背負っているもの、不安を示しているなと思った。物語として動きがある部分では決してないんだけれど、あの時間を観客に体感させるにたっっぷりと時間をかけたところ、本当に大好きです。

 舞台の板の上で流れる時間と観客が実際に体感している時間。そこをどうすり合わせて描くかが舞台の面白いところの一つだなあと思っていて、今回はこのシーンでこの時間の融合を感じられた。

 

 セットだと上手、下手の回廊もすき。今回センブロのほぼほぼドセンから観劇していたので袖とかが一切見えてないのがあるのかもだけれど、回廊を置くことで舞台袖までが舞台だった。見えてないけれど回廊の奥にも油屋の部屋や空間が広がっているのが見える。これは楽しかったなあ……あとこれは帝劇以外の舞台でみたらまた違うのかも。個人的には一番博多座で見たいです。だって博多座なんて客席から出てもそこは油屋(広義)じゃん?絶対楽しいに決まってる。壮大なセットと対比にパペットはかわいい。神様たちは衣装さんの腕の見せどころでもあったし、坊とかは小さくて笑

 

クルクルクルクルステージング

 ジョンケアードの頭の中はどうなってるんですか???転換とキャストの動きがこの舞台めちゃくちゃ激しいと思う。場面として場所を動かさないといけないところとか、パペットだけを移さないといけないところ、千尋が走っていくのを描かないといけないシーン。色々な要因で移動が多くてキャストと装置の転換と小道具の移動全てが複雑に絡み合ってる。これはアンサンブルはじめキャストの人も大変そう……笑

 で、この場面を動かしているのが人なのが好きなポイント。盆の動きに合わせて転換はしているんだけれど、こうなんというのかな……人の動きへの誘導が上手い?確かにこの舞台にはたくさんの機械が使われていて、照明とかもふんだんに用いられているんだけれど。でもその中で生きている人同士の反応をすごく大切に描いて演出しているからすごく人の心を感じて、ジョンの演出は好きだな〜とまた思う。メカニカルなんだけれどもアナログで人間的というか。その狭間というか。そして同じく映画と舞台の狭間というか。舞台の上でできるであろう表現の地続きに、アニメでないと出来ないだろう表現(のみたて)が目の前で起きていたので、現実と空想の境界が曖昧になるというか夢を見ているような心地だった。

 

 音楽は基本的にはサントラに忠実という記憶だったけれどどうだったかな!みんなで雑巾掛けする時の動きと音楽はあー!これジョンとブラッドのタッグ感半端ないー!と思った。そういえばオケはオケピにいなくて、え?そこにいたの?!となるところにいてちょっとびっくり。確かに帝劇の奥行きってもうちょっとなかったっけ??と思ったんだけれど、途中から物語にめり込みすぎてそんな詮索をしなくなったので。

 おくされ様の中身がよきかな……と言って飛び回るのも良かったなあ。突然のフライングでびっくりした(パペットは人じゃないから客席上空のフライングできるもんね)完全なストプレ(なのに折井さんいるんだ?とは思った)と聞いていたんだけれど、要所要所で歌が差し込まれていて、まさかの歌も聞けて大満足。

 

冒頭に書いた通りキャストとキャラの一致性がすごかった。みなさんこのキャラがこの人じゃないとだめだなと思わせるほどの一致ぷり。

 まず萌音ちゃん。小柄な上に声を幼く作ってたのでカテコでお話しするときまでもう萌音ちゃんが24歳だということを忘れていた。大人の女性なんだけれども、舞台の上にいる千尋は10歳だった。ジブリあるあるのあのバタバタした動きも本当年相応にしていたのだけれど、舞台として綺麗に見せる、というのもされていてにっこり。肘から先の動きが私は好き。

 三浦さん。ダブルピルエットからハクに変わるシーンがとっても綺麗だった。ダブルピルエットというか私にはトリプルアクセルにみえました。本当はどうなんですか。入野さんの言い方をものすごくトレースしようとしているようにも感じた。佇まいとか、一つ一つの動作が美しいですね………ハクがコロコロ…………試験終わったら源氏双騎見ます(源氏のどっちかわからないけど絶対あれは髭切でしょ。兄者だよあの空気は)

 カオナシもとい辻本さん。ダンサーさんとお聞きした。カオナシは動きがない分いざ動いた時の奇怪さの威力がものすごく、体を自在に操れるダンサーさんならではだなあと思った。個人的にはもっとカオナシのダンスいっぽ手前動作見たかったな!お、これからダンスする?と思ってしなかった部分があったので

 

 正直これが初日(正しくはプレビューあり)(でもゲネプロできなくて実質プレビューがゲネプロだよ、とジョンが言ったらしい笑)なの??と思うくらいだったので、Wキャストも、そして時間を経て深まったカンパニーがどういう演技をするのかがすごく気になるところ。なんたってまだ始まって4日目だし、これが7月まで続くんですよね。

 カテコで萌音ちゃんが「7月まで続きます!ふとした時にどうしてるかなー?頑張ってるかなー?」て思い出してください」と言っていて、本当に長旅だと思うし私は多分時々そう思うでしょう笑「色々な事情があり、初日が遅れたりする舞台がある中でこうして予定通りに初日を迎えられたことを幸せに思います………(中略)7月までずっとみんなで走り抜けたいです!」と萌音ちゃんが帝劇の真ん中で座長としてお話しされてて、グッときた。この状況下の中では(個人的には)7月まで誰もかけずにみんなで走り続けるというのは夢物語に近い(と思ってしまうこの状況が悲しい)と思うので、だからこそ千と千尋カンパニーのみなさんが7月まで無事にたどり着けますようにーーー!!良いものを作り上げて、見せてくれてありがとうーーー!!